• RyoFujisaki

第6回 モック(後編)

 

 

 



ここは昭和レトロな喫茶店「モック」。

営業時間中にもかかわらず、引き続き取材に対応して頂いています。ここにきて、フードメニューと2杯目のコーヒー・・・スパゲティーセット(ナポリタン)を頂くことにしました。

 



 

 

ウエイトレス:マスター、志村けんに似てるって言われてましたよね。

 

マスター:え?志村けん??何でもいいよ。

 

ウエイトレス:何でもいいんですか?似てるって言われてたのに。。

 

 

―― 言われてみれば少し・・・

 

ウエイトレス:似てる。

 

マスター:髪後ろで結んでるからじゃないの?

 

ウエイトレス:いやー、顔がよく似てますよ。

 

 

そんな“志村けん似”のマスターに、お店の事やご自身のことを尋ねることもあれば・・・マスターが私について尋ねてくることも。

 

 


マスター:お兄さん、ファッションにこだわってるんじゃないの?

 

 

―― いえいえ。そういうわけでは、、、

 

マスター:違うの?俺はこだわってるんじゃないかと思ってたんだけど。個性があるからファッションに「これ!」っていうのが・・・なんかあるんじゃないかって。

 

ウエイトレス:なんかアーティスト系のね。

 

 

―― 元はネットシャツっていう、アミアミの服を着てたんですよ。

 

マスター:そういえば着てたよね。

 

 

―― ひとに言われたんですよ。そういうのがいいんじゃないって。

 

マスター:ニットの良く着てたからさ。あの時なんだっけ、ニットの貴公子って流行ったじゃん。

 

ウエイトレス:手編みのね。

 

マスター:そうそうそう。あれのあの・・・真似をしてるのかなって思ったの。すごいざっくりしたのね。いつも着てたよね。

 

ウエイトレス:あれも流行りだったんですかねえ?

 

マスター:あの人がだから作ったんでしょ。だからあのひとがその時に、それにあれしてんのかなって。

 

 

―― 私のは古着なんです。50年くらい前のデザインの。

 

ウエイトレス:昭和レトロな方だから珍しいなって。マスターが。「マッチでタバコを吸ってるよ」っつって。

 

 

―― 笑 そんなところまで。

 

 

ウエイトレスさんもマスターも、お客として度々来ていた私の事を覚えてくれていました。

 



 

 

ウエイトレス:・・・なかなかね。店のこだわりを話してくれない、、笑

 

 

―― ・・・笑 例えば、カップは何種類使われてるんですか?

 

マスター:カップ?適当!

 

 

―― コーヒーを何種類か頼んだことあるんですけど、種類によって違うもので来たような・・・

 

ウエイトレス:えっと・・・適当なんですけど、笑 何だろう。これはトラジャ用の・・・キーコーヒーのブランドなんで。

 

マスター:それみんな気分!

 

ウエイトレス:え!でもトラジャだけは決まってるじゃないですか!?

 

マスター:まあまあまあまあ。まあ、適当でいいや。

 

ウエイトレス:トラジャは確か、キーコーヒー以外は扱ってなかったんで力を入れてるってこれをもらったんです。

 

 

トラジャコーヒーは、かつてインドネシアで栽培されていた最高級品種。20世紀中盤に入り、第二次大戦からインドネシア独立・・・動乱の中で生産が途絶えてしまっていたが、Key Coffeeが5年の歳月をかけ、1978年に復活させた。現在ではKey Coffeeを使用する各店舗をはじめ、世界中でその味を楽しむことができる。

 

と・・・記事を書くためにこういうことを調べていると、どうしても興味が沸いてきてしまうもので、、トラジャ用カップの撮影を兼ねて、実際に注文してみました。

 



 

 

いつもお願いするブレンドと比べると、ストレート豆の特徴と言えるでしょうか。雑味のない香りを感じます。どこか気品のある香りは、高級品種の証でしょうか。

 

ブラックのままでひと口頂くと、強い香りや「クセ」というような主張はなく、ほんのりとした甘みと、特徴のある酸味が穏やかに広がります。ミルクと砂糖との相性は特筆!穏やかな味わいの中の力強さが際立つ感じは、トラジャの真骨頂を垣間見た・・・!と、思わせる気高さを感じました。

 

 

せっかくなので、もう一度コーヒーのお話を伺ってみましょう。

 

 

―― サイフォンで淹れるコツっていうのは・・・?

 

マスター:ないよ。サイフォンがやってくれるんだから、人間は手助けするだけ。ちょっとお湯入れてあげるだけだよ。

 

ウエイトレス:私にも淹れられるし。

 

 

―― 安定した味っていうと、一番かもしれませんね。

 

マスター:当たりはずれはないよね。

 

ウエイトレス:火を入れ過ぎちゃうと不味いしね。タイミングはありますね。

 

 

―― ここだ!っていうのがあるんでしょうか。

 

ウエイトレス:ある。あと水の量。お湯の量ね。

 

 

―― きちんと測って淹れるというよりは感覚、でしょうか。

 

ウエイトレス:感覚・・・?

 

マスター:あのね。無理やり理屈なんか付けないの。何もかにも杓子定規で理屈付けてちゃあれしょーないからね。適当。

 

 

―― 長くやられていると、わかるようになるのでしょうか。

 

マスター:みんな適当だよ。よくみんなこだわりとか何とか言うけどさ、こだわりなんかないよね。誰でもみんなやってくんだけど、ね。言わないだけで。こだわりなんかない。いい加減だから。

 

ウエイトレス:お湯の量とタイミングね。

 

マスター:だってなあ。マグロだってさあ。高いマグロ食えば旨いんだよ。やっぱり。材料があれだったら旨いんだから。誰が作っても同じだし。

 

 

―― それでも、ちゃんとした包丁でちゃんと切れば、っていうのはありますよね。

 

ウエイトレス:あー。あるね。

 

マスター:スッと切ってさ。繊維を壊さないようにきれいに切れればさ。野菜だって何だってみんなあれでしょ。

 

ウエイトレス:まあ、コーヒーは勘だよね。勘と、お湯の量と、それから豆の量。マスター意外とうるさい。

 

マスター:それだって、自分でいいと思ってたって他所に行ったら大外れかもしんないよ。機械ならねえ。工業製品だから一定の量でピタッとできるけど。人間のやることはズレもあるしさ。みんないい加減。

 

ウエイトレス:あと、お客様のその日の気分もありますよね。あれ今日うまいな、とか言って。いつも通りなのに、、って。

 

 

―― その人が淹れるからこの味、っていうのも、きっとあるじゃないですか。意図しないにしても・・・それがわかるほど違うか、ほんとに微々たる違いかは別にして。

 

ウエイトレス:あるのかなあ。・・・とんでもなく大失敗したらわかるかもしれないけど。笑 メチャクチャもう火入れ過ぎてブクブクブクブクやってたらもう、味も何も無くなっちゃうけどね。

 

マスター:そうなったら飲む人がさ、ちょっと砂糖多く入れりゃいいし、ミルク多めに入れればいいしさ。味は変わるし。ラーメン屋いってさ、いちばん初めにね?そのまま食べる人と、コショーはじめから入れちゃう人と。ナポリタンだってそうだよ。そのまま食べる人と、はじめから入れちゃう人とさ。

 

 

 

マスター:ラーメン屋だったらさ、味を必ずちょっと残してあるはずだよ。お客さん何入れるかなーって、ちゃーんと計算してるオヤジもいる。初めからバサッ!バサッ!とみんな入れちゃう人いるじゃん。あれはちょっと勿体ないよね。ちょっと食べて見りゃいいのにね。それがその人のやり方かもしれない。別の人から見たら違うかもしれない。答えなんかねえんじゃん。答えなんか求める方がおかしいんだよ。酒だってね。気分いい時はうまいだろうし、悪い時は苦いだろうしさ。

 

 

―― コーヒーはその最たるものですからね。そういう懐の広さというか、幅の広さというか・・・

 

ウエイトレス:そうね。幅は広いからね。

 

マスター:今言った話ね、俺じゃなくて美人が淹れるとね、旨いなっていうの。そうじゃないとマズイなって。

 

ウエイトレス:その逆もあるの。「やっぱりマスターじゃないと」ってのもあるし。「おねーちゃんで大丈夫なのかよ!?」ってなる時もあるし。

 

 

―― 今日どちらも頂きましたが、どちらも美味しいです。笑

 

ウエイトレス:笑 あ、そっか。そうですよね。

 

マスター:いいこと言いますねえ。

 

ウエイトレス:素晴らしい。笑

 

 



 

さて。WEB上を見回してみると、今ではあちこちに飲食店のレビューが書き込まれています。もちろん、モックも例外ではなく・・・??

 

 

ウエイトレス:え!ほんとだ!勝手に撮ってんだ。

 

マスター:誰かが撮って行っちゃったんじゃない?

 

ウエイトレス:これね・・・ほんとにみんな勝手に撮っていくのね。あらあら。マスター、メニューまで載ってますよ。

 

マスター:大したもんだね。

 

 

―― 記事の更新日が年末になってます。割と最近ですね。

 

ウエイトレス:知らないー!

 

 

―― 食べログとか、来たお客さんがどんどん載せてますからね。

 

ウエイトレス:みんなもうね。誰が載せて良いっつったみたいな。笑

 

マスター:もう適当でいいよ。

 

 

―― 営業時間もこんな感じで・・・

 

ウエイトレス:・・・9時からです。夜は8時までですね。それで不定休。

 

マスター:適当って書いといてください。適当でいいです。やってる人間だってそうだし。

 

 

ウエイトレス:席数8席って・・・8席じゃないし!笑 24席あるし!

 

マスター:もともと30あったの。椅子がね。

 

ウエイトレス:そうか。何脚か壊れちゃって・・・

 

ウエイトレス:だからかあ。なんかたまに電話がかかってきて「すみません〇人なんですけれど席空いてますか?」って言われて。あれっ?とか思って。いや?空いてますよ?って。余裕なのに。それで「予約できますか?」って言われて、来て空いてればいいですよ、予約は特に取ってないですよ、って。そうか。8席しかなかったら予約するかぁ。

 

 




 

店内には、4人掛けのテーブルが6脚と、カウンターが2席・・・。

 

 

マスター:みんなよく撮ってくね。

 

ウエイトレス:すごい!モックのメニューとか。店内の様子とか・・・

 

マスター:ふーん。誰が書いてるんだろう。面白いね。

 

 

―― 外装も写真にとって・・・

 

マスター:そんな、盗み撮りなんていくらでもできんじゃん。

 

 

―― マスターのお顔も・・・

 

ウエイトレス:あーら。いい写真だこれ。

 

マスター:最悪だ。笑 へ~~、大したもんだね。そっちの方が感心するよ。

 

ウエイトレス:料理がこんなにきれいに見えるんだ。すごいすごいすごい。

 

ウエイトレス:いつの間に撮ったんだ~?でもね、昔は本当に写真撮るときはお断りを入れてくれたんですよ。「すみません食事療法で~」とかね。いつからでしょうね。自由に撮り始めてって。「おお?!」って。もう慣れましたけどね。

 

 

ということで・・・レビューサイトにある席数や営業時間の記載があやふやだったので、今回改めて確認させて頂きました。記事の最後にまとめてあります。

 

 

 

ウエイトレス:・・・昔は定休日あったんですけどね。不景気になってからはなくなりました。「ちょっとでも開けるんだ!」って。営業時間も、9時半まででした。マスターの体力がなくなってきたのと・・・震災から変わりました。

 

ウエイトレス:計画停電をきっかけに、夜間の営業が周りが一斉に、、「節電しよう」って、周りのお店が8時営業終了にしようってなって、うちもそれに合わせたんですよ。そうしたら、それから人が戻らなくなっちゃって。遅い時間のお客様がね。じゃあうちもそうしようって。あれからちっとも良くならない。景気が。厳しいよね、厳しい。

 

 

―― あそこにも貼ってありますね。震災の日にちと時間が手書きで・・・

 

ウエイトレス:あれは何か、、あの災害を忘れるなって。いつでも心がけて。いつでも災害を忘れずに・・・モノを壊さないように気をつけなさいって。私あんまり壊さないけど、みんな壊してくれるので。笑

 

ウエイトレス:自分の行動に気を付けて、壊れる場所にモノを置くな、っていう。それであの時の心構えを忘れずに、ってことかな。

 



 

 

ウエイトレス:ここもそうだけど・・・みんなやっぱり、一代で終わっちゃいますね。後継ぎがいないから。オーナーが変わるとね、客層も変わっちゃうから。

 

 

―― 人についてくるものですからね。お客さんっていうのは・・・

 

ウエイトレス:そうそう。だから何だろうね、マスターあってのモックだからね。だから後継ぎがいないし、マスターに会いたくてお客様がくるから、マスターがいなければ・・・いまもう72,3歳?かな?  なんで、マスターが死んじゃったら終わりかなって。なので、今残ってる従業員さんたちも・・・従業員さんっていっても2,3人しかいないけど、やっぱり最後まで付き合うって。

 

 

―― 人柄ですね。

 

ウエイトレス:そう、人柄かな。

 

 







 

お店を出る頃には、すっかりと日は傾いていた。

 

「適当、いい加減」と仰るマスターのお店は、これからもひっそりと営業を続けます。

ゆったりと過ごせる憩いの場所と、マスターの人柄を求めてやってくる、そんなお客さん達に支えられながら・・・

 

 

 

 

取材協力: モック

 

〒286-0047

千葉県成田市江弁須195-8

京成線「公津の杜」駅より車で5分、「成田」駅(京成、JR共)より車で8分

JR成田駅よりバス乗車(はなのき台行)、「江弁須」バス停下車徒歩1分

 

営業時間 9:00~20:00(不定休)

席数:4人掛けテーブル6卓、カウンター2席

全席喫煙可 

 

℡ 0476-27-3910

 


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